【東北・北海道】猫にまつわる寺社仏閣【8選】

雪深い北の大地にも、猫たちと人との心温まる物語が静かに息づいています。

東北地方から北海道地方にかけては、厳しい自然と共に生きてきた人々の中で、「ネズミを退治する守り神」「福を呼ぶ縁起物」、そして「神の使い」として猫が信仰されてきました。

この記事では、【東北地方・北海道】にある“猫にゆかりの深い寺社仏閣10選”を紹介。それぞれの地に残る猫の伝承やご利益、そして猫たちが今も人々に与える癒しと絆をお届けします。

旅の途中で、ふと立ち寄った神社やお寺で、あなたも小さな猫の足跡に導かれるような不思議な出会いをするかもしれません。

田代島 猫神社(宮城県石巻市)|海を見守る“猫の島”の守り神

日本でも屈指の「猫の島」として知られる宮城県石巻市・田代島。

この島の中心にあるのが、猫を祀る「猫神社」です。漁師たちの間では、猫は“魚の群れを知らせる神の使い”とされ、昔から大切にされてきました。

ある日、網を結んでおくための岩が転がった拍子に一匹の猫に当たって命を落としてしまい、漁師たちが深く悲しんで、その魂を慰めるために小さな祠を建てたのが、この猫神社の始まり。

今でも地元の人々が花を手向け、観光客が猫の健康と幸福を祈願に訪れます。潮風と猫の鳴き声が交わる穏やかな空間は、まさに“猫と人の共存”を象徴する聖地です。

遠野郷八幡宮・猫神社(岩手県遠野市)|社務猫“オトラ”がつないだ縁

画像引用元:遠野郷八幡宮HP

岩手県遠野市の「遠野郷八幡宮」には、かつて“社務猫”として愛された「オトラ」という猫がいました。

気性の荒いのら猫でしたが、五匹目の社務猫として迎え入れられ、神社での生活に慣れると毎日朝夕に参拝を欠かさない“信心深い猫”に。

社務所から本殿までの150メートルの参道を、参拝者の先頭に立って歩く姿が評判となり、雑誌やテレビにも取り上げられるほど。

しかし、2013年9月3日、オトラはいつものように本殿へ参拝に向かったのを最後に、姿を消してしまいます。まるで“神様のもとへ帰った”かのようでした。

その後、それまでのオトラの献身を讃えて境内に建立されたのが「猫神社」です。猫神社にはオトラの姿を描いた絵が奉納され、今も全国から多くの人々が参拝に訪れます。

浅舞八幡神社(秋田県横手市)|忠猫伝説が息づく八幡さま

秋田県横手市平鹿町の浅舞八幡神社には、全国的にも珍しい“忠猫(ちゅうびょう)”の碑が残されています。

この地の大地主・伊勢多右衛門(いせたえもん)は、貧しい人々を助けるための慈善組織「感恩講」を作り、米を蓄えるなど地域の発展に尽くしていました。

しかし、村の米蔵はネズミに荒らされ、庭園の木々や堤までも被害を受けていたといいます。

そんな中、多右衛門の飼っていた白まだらの雌猫が、自ら米蔵を巡回してネズミを退治。さらに庭園の野ネズミやヘビまでも追い払い、約10年の歳月をかけて村を守り抜きました。

猫は生涯子を産まず、まるで聖女のように静かに暮らし、13歳でその生涯を終えたといいます。

多右衛門は翌年、この猫の功績を後世に伝えるため、庭園に「忠猫碑」を建立。「忠義な猫の功績を永遠に忘れないでほしい」という言葉を刻みました。

鹿角八坂神社(秋田県鹿角市)|狛猫が見守る山里の社

画像引用元:鹿角八坂神社HP

「鹿角八坂神社」は、五穀豊穣と縁結びのご利益で知られる神社です。この神社の最大の魅力は、全国的にも珍しい“狛猫(こまねこ)”たち。

参拝者を笑顔で迎える猫の石像は、良縁と幸福を招く神の使いとして大切にされています。

画像引用元:鹿角八坂神社HP

鳥居の前には「全招き猫」と「縁結び猫」が並び、訪れた人々をやさしく招き入れます。記念撮影スポットにもなっており、境内は常にあたたかな笑顔であふれています。

さらに、「化け猫様」と呼ばれるユニークな石像も。舌を撫でると厄を食べてくれると伝わり、背中にも“かわいい秘密”が隠されています。参拝の際には、ぜひ探してみてください。

画像引用元:鹿角八坂神社HP

境内には猫だけでなく、神社を守る「秋田犬」の像も点在しています。鳥居脇の秋田犬は、にっこりとした表情で幸せを招く人気者。

さらに、社務所の庭には「きりわんぽ」というきりたんぽ型のマスコット像もあり、「世界の平和と人々の幸せがきりたんぽのように長く続くように」との願いが込められています。

猫稲荷神社(福島県川俣町)|願いが“倍返し”で叶う招き猫の社

猫稲荷神社絵馬展ポスター [PDFファイル/992KB]

福島県川俣町にある「猫稲荷神社」は、知る人ぞ知る猫信仰の名所。もともとは狐を祀った普通の稲荷神社でしたが、明治4年に猫稲荷神社に改称されたそうです。

川俣町は養蚕や絹織物産業で栄えた地域であり、蚕を食べるネズミを退治してくれる猫の存在は非常に重視されていました。こうした背景から、猫信仰が根づいたと言います。

この神社で最も有名なのは「猫を描いた絵馬」の奉納と、それに絡む“倍返し”の風習。

参拝者は、繭の豊作や猫の無事を祈って、既に奉納されている猫を描いた絵馬1枚借りていき、繭がよくできたり猫が多く鼠を捕ったら、絵馬を2枚にして返すというもの。

この「倍返し」の風習によって、社殿内には655枚という多くの絵馬が残っています。

現在、道の駅川俣内にある「かわまたおりもの展示館」にて、猫稲荷神社に奉納された600枚を超える絵馬の展示会が行われています。(2025年11月9日まで)

猫稲荷神社絵馬展ポスター [PDFファイル/992KB]

清田稲荷神社(札幌市)|黒猫が導く“幸運の使い”

清田稲荷神社は、2010年に伏見稲荷大社の御分霊を受け創建された比較的新しい神社です。この神社には代々「黒猫」が現れ、守り神のように扱われてきた伝説があります。

神社創建当初から、黒猫が境内に姿を見せ、初代の黒猫が姿を消すと、また別の黒猫が現れる――そのような“バトンタッチ”のような現象が繰り返されてきたそうです。

この黒猫伝説を反映し、清田稲荷神社では黒猫をモチーフにした授与品も多く扱われています。

黒猫デザインのお守り、御朱印帳、絵馬、さらには御朱印にも猫の意匠が取り入れられており、猫好きにはたまらないスポットです。

乙部八幡神社(爾志郡乙部町)|幸運を呼ぶ猫のお守り

日本海を望む乙部町に鎮座する「乙部八幡神社」は、古くから海上安全や五穀豊穣を祈る人々に信仰されてきた神社です。

ここでは、猫をかたどった小さなお守りストラップが授与されることで知られています。「福猫お守り」は瞬く間に評判となり、遠方から購入に来る方もいるほどです。

猫のお守りが登場した背景には、「人と動物、自然が共に穏やかに暮らせる祈り」を形にしたい」という宮司・松崎胤彦氏の思いがあるのだとか。

この「福猫お守り」は数量限定で、同じ形は二つとありません。 一匹一匹に異なる表情と木目があり、それぞれが世界に一つの護り主として迎えられます。

相内神社(北見市)|“猫御朱印”が話題の小さな聖地

相内神社 は、「ネコ御朱印」によって地域の動物愛護センターを支援する活動で注目を集めています。北海道新聞でも取り上げられました。北海道新聞デジタル

この御朱印は、宮司さんの奥様が描く、保護猫の絵を添えた特別版です。御朱印の初穂料はすべて 北海道動物愛護センター 道北支所へ寄付されています。

延べ400人以上の方がこのネコ御朱印を手にし、支援の輪が広がっています。

🐾 おわりに:北国の猫たちが教えてくれる、祈りとやさしさの形

東北と北海道――冬には雪深く、春には遅咲きの花が彩るこの地では、厳しい自然と寄り添うようにして人と猫の絆が育まれてきました。

田代島の漁師を見守る猫、遠野の神社で参拝者を導いたオトラ。どの物語にも共通するのは、「猫が人の心に寄り添い、人が猫を敬う」という優しい循環です。

もし旅の途中で、境内の片隅にたたずむ猫と目が合ったなら、それはきっとあなたの心が癒やしを求めているサイン。

どうかその瞬間を大切に、北の大地に息づく“猫と人の祈りの物語”を感じてみてください。

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