猫は古くから日本人にとって特別な存在でした。ネズミを退治する守り神として、また福を招く縁起物として、各地で猫は人々の生活に寄り添い、信仰の対象にまでなってきました。
そんな猫信仰は今も残っており、日本各地には猫にゆかりのある寺社仏閣が点在しています。
中でも九州は、古代から大陸との交流が盛んだった地域であり、独自の猫文化や逸話が今も息づいています。
本記事では、九州に点在する「猫にまつわる寺社仏閣」を都市ごとに紹介していきます。旅行や猫好き巡礼の参考に、ぜひご覧ください。
聖福寺(福岡県福岡市)|禅寺を彩る地域猫たち

福岡県福岡市博多区にある臨済宗妙心寺派の寺院で、日本最古の禅寺として知られています。博多の中心部にありながら静けさに包まれた場所です。
境内を歩けば、どこからともなく猫が現れ、地域の人々に見守られながら暮らしています。「猫寺」と呼ぶ人もいるほどで、わざわざ猫に会いに訪れる観光客も多いそうです。
歴史的建造物と猫のコントラストは、写真映えするスポットとしても人気です。
織幡神社(福岡県宗像市)|御朱印にも登場する猫

宗像市の海辺に佇む織幡神社(おりはたじんじゃ)は、福岡県宗像市鐘崎に鎮座する神社です。地元では「シキハン様」とも呼ばれています。
猫をモチーフにした御朱印が授与されることで知られています。
境内には自由に過ごす猫たちの姿もあり、漁港の町らしく猫と人との距離が近いのが特徴。参拝とあわせて港町の散策を楽しめば、猫のいる風景そのものが旅の思い出になります。
月瀬八幡宮(福岡県うきは市)|猫の石像に出会える八幡宮

うきは市の月瀬八幡宮は、室町時代に築かれた「猫城(ねこじょう)」と呼ばれる山城の城址に創建された神社です。
難攻不落な城として有名で、戦国時代2度の合戦でも落城しなかったという逸話も。
難攻不落の城にちなんで近年は「合格(必勝)」祈願のご利益があるとされ、キラキラ輝く合格招き猫(一対)が奉納されています。
宮若追い出し猫神社(福岡県宮若市)|災いを追い払う猫の力

宮若追い出し猫神社は、福岡県宮若市の地域伝説や民話から生まれた「追い出し猫」を祀る期間限定の神社です。
追い出し猫は両面に顔があり、表は睨みを利かせて厄災を追い払い、裏は微笑みながら福を招くという「表裏一体型招き猫」として知られています。
この神社は、「追い出し猫本舗」店舗に併設されるかたちで12月~3月中旬頃の期間限定で開設され、願い事を書き込む絵馬の奉納や、神主さんによる祈祷も行われます。
深江神社(福岡県糸島市)|毎月22日は「猫御朱印」の日

福岡県糸島市の深江神社は約830年の歴史を持つ古社で、1190年(建久元年)に原田種直公が太宰府の竈門宝満宮および太宰府天満宮の御分霊を勧請し創建されました。
深江神社では毎月22日に「猫御朱印」が頒布される特別な日があります。これは猫好きの参拝者に大変人気で、季節ごとにデザインが変わって楽しめる御朱印です。
猫と神社の関わりは地域の猫愛護活動や参拝者と猫の共生から発展しており、社務所のスタッフも猫を大切にしていることで知られています。
尾曲がり猫神社(長崎市)|福を引っかける「鍵しっぽ猫」

長崎といえば「尾曲がり猫(鍵しっぽ猫)」の街として有名です。その文化を象徴するのが尾曲がり猫神社。
日本一小さな屋内型「猫神社」で、お賽銭は全国の保護猫達の為に全額寄付されています。
尾が曲がった猫は「福を引っかけてくる」と信じられ、商売繁盛や家内安全の象徴とされてきました。
長崎市内には尾曲がり猫の石像やモニュメントも点在しており、神社参拝と合わせて街歩きを楽しむことで、猫文化を深く感じられます。
生善院(熊本県水上村)|狛犬ならぬ「狛猫」

水上村の山あいにある生善院は猫寺として知られ、全国的にも珍しい「狛猫」が出迎える寺院です。
元は普門寺という寺でしたが、住職の盛誉法印が無実の罪で殺され、その母が深い恨みを抱いて、愛猫の「玉垂」とともに淵へ身を投げました。
この後、相良家が化け猫(玉垂)の祟りに苦しんだため、盛誉親子と猫の鎮魂のために再建されたのが生善院と言われています。
境内の随所に猫を象った装飾があり、猫好きにとっては聖地ともいえる場所です。
猫大明神(熊本県荒尾市)|地域に根ざした小さな祠

荒尾市にある「猫大明神」は、地元では「猫宮」と呼ばれる小さな祠。猫を神格化して祀った珍しいスポットです。
大きな観光地ではありませんが、地元の人々に大切に守られており、素朴な魅力があります。
毎年1月10日には、猫社(ねこじゃ)様というまつりも開催され、祭りで配られる御札にはネズミ除け、家事災厄厄除け、金運上昇。そして無病息災、安産成就、交通安全のご利益があります。
無病息災と、交通安全には猫ちゃんにもご利益があるそうです。
猫神社(仙巌園内/鹿児島県鹿児島市)|島津家の猫伝説

鹿児島市の仙巌園にある猫神社(ねこがみしゃ)は、戦国武将・島津義弘が朝鮮出兵の際に連れて行った猫を祀ったことが起源とされています。
朝鮮出兵に連れて行った7匹の愛猫のうち、生き残った2匹を神として祀った神社です。猫の瞳孔の動きで時刻を知るために連れていったとされ、「時の神様」とも呼ばれています。
猫神社は仙巌園内の小さな石祠で、全国からペットの健康長寿や旅行安全を祈願する多くの参拝者が訪れているそうです。
福良天満宮(大分県臼杵市)|学問の神様と猫の御朱印

福良天満宮(大分県臼杵市)にある赤猫社は、地元臼杵の商人の活躍と歴史に由来した特別な境内社です。
赤猫社は平成11年(1999年)に建立され、福良天満宮境内に設けられました。ここで「あかねこ」と称される故大塚幸兵衛や臼杵の商人の御霊を祀っています。
商業繁栄・家内安全・良縁招来といったご利益があります。
また、赤猫社の周囲には「福猫たまりの井戸」があり、29体の赤猫石が祀られ、地域の人々に福を授けると信じられており、触れることで「良福」を得られるとされています。
まとめ
全国各地には、猫を祀った神社や寺、猫にまつわる逸話が伝わる仏閣が数多く残されています。
そこには、ネズミを退治する守護者としての役割や、福を招く縁起物としての信仰など、さまざまな猫と人との関わりが刻まれていました。
今回紹介した寺社仏閣は、単なる観光スポットではなく、地域に根差した文化や歴史を映し出す存在です。
猫好きの方はもちろん、九州旅行の新たな目的地として訪れてみれば、猫と人との深い絆を感じられるでしょう。
九州をめぐる「猫巡礼」は、きっと旅に小さな癒しと発見をもたらしてくれるはずです。

























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