かわいさの裏に“リスク”もあることを忘れずに
ある日、ふと目が合った野良猫。警戒しながらもこちらをじっと見つめるその姿に、「少しなら撫でてもいいかな」と手を伸ばしたくなることがあります。
でも、ちょっと待ってください。野良猫の中には、一見元気そうに見えても、感染症を抱えている子が少なくありません。
その子にとっても、そしてあなたや飼い猫にとっても、知らずに触れることが命に関わる問題になることもあるのです。
この記事では、野良猫とのふれあいにひそむ感染症のリスクと、私たちにできる思いやりある行動についてお伝えしていきます。
野良猫に多い感染症|「大丈夫そう」が一番危ない

「元気そうだから大丈夫でしょ」と思っていませんか?
実は、元気に見える子ほど油断してしまい、感染リスクが見落とされがちです。以下は特に注意すべき代表的な病気です。
● 猫ひっかき病(バルトネラ症)
- ノミが媒介するバクテリアによって発症
- 感染猫にひっかかれたり噛まれたりすると、人間にも感染
- 腕や首のリンパ節が腫れる・発熱・倦怠感などを伴い、数週間続くことも
- 免疫力が弱い人(子ども、高齢者)は特に注意
● ノミ・ダニがもたらすリスク
- ノミに刺されると、人も猫も皮膚が炎症を起こす
- ダニによって猫が貧血になったり、人間にSFTS(重症熱性血小板減少症候群)などのウイルスがうつることも
- 特に草むらや倉庫まわりにいた猫は要注意
● 猫風邪(猫ウイルス性鼻気管炎・カリシウイルスなど)
- くしゃみ、鼻水、涙目が特徴
- 感染力が非常に強く、飼い猫にうつると長期治療が必要になることも
- 見た目に明らかな症状が出ていなくても「保菌している」場合がある
● 猫エイズ(FIV)・猫白血病ウイルス(FeLV)
- どちらもウイルス感染による免疫疾患
- 発症すると慢性的な体調不良や腫瘍などに進行する
人間にうつるリスクとその対策

野良猫とのふれあいで最も気をつけたいのが、「引っかかれた」「噛まれた」といった傷から感染するケースです。
実際に、野良猫に手を伸ばした直後にひっかかれて感染症を発症したというケースは少なくありません。
ひっかかれた時の対応マニュアル(保存版)
- すぐに流水で5分以上洗う(血を出すように)
- 石けんでしっかり洗浄
- アルコール・ヨード液で消毒
- 傷が赤く腫れてきた、熱が出たら即病院へ
「たいした傷じゃないから」と放置するのが一番危険です。ひっかかれた部分が赤く腫れたり、関節の痛みや発熱などが出たりしたら、迷わず受診してください。
猫の体に触れた後は必ず手洗いを。可能であれば手指用のアルコール消毒を持ち歩くのもおすすめです。
飼い猫にも注意!無症状でもウイルスを持ち帰ることがある

「自分は平気だったから、家に帰って飼い猫におやつでも…」と思っていませんか?
それ、ちょっと待って!
ウイルスは服や手、靴の裏に付着することがあります。
● 感染を広げないために、今すぐできる3つのこと
- 帰宅後はすぐに手洗い+アルコール消毒
- 飼い猫に触れる前に着替え+靴下の履き替え
- 外で使ったキャットフードの容器・道具は分けて管理
また、飼い猫には定期的なワクチン接種を忘れずに。ワクチンを打っていれば、万が一感染しても重症化を防げます。
病気のサインに気づく目を持とう|観察力が命を守る

ふれあいの前に、その猫の様子を観察することが大切です。以下の特徴が見られたら、ふれあいより見守る勇気を持ちましょう。
- 目やに・涙目・鼻水が出ている
- 毛並みがバサバサ・異常な脱毛
- 体がやせ細っている・骨ばっている
- 呼吸が荒い・声がかすれている
- 明らかに元気がない
- 人を見ても逃げない(弱って動けないケースも)
「かわいそうだから抱きしめたい」
その気持ち、痛いほどわかります。でも、助けたいなら冷静さが必要です。場合によっては保護団体への連絡が、猫にとって最善の選択肢になります。
まとめ|やさしさに“衛生”というプロ意識を

野良猫とのふれあいは、本当に癒されます。でも、その裏側に潜む“目に見えないリスク”にも目を向けてください。
- 猫にやさしくする=猫に近づく、ではない
- 触るなら洗う、引っかかれたら病院へ
- 飼い猫には細心の注意を払って
あなたの「思いやり」は、ちょっとした予防意識とセットにすることで、猫たちの未来をもっと明るくできます。
ただ可愛いだけじゃない、責任あるふれあいを。それが、私たち人間にできる最高の“保護”なのかもしれません。
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