※この記事は感動猫動画さんの許諾を得て創作された物語です。
春の夕暮れ、いつものように散歩をしていました。柔らかな風が心地よく、道端の花もほんのりと甘い香りを放っています。
ふと足を止めた時、一匹の黒猫が目に止まりました。どこか品のあるその猫は、じっとこちらを見つめると、くるりと背を向け、数歩歩いては振り返ります。
「…ついてこいってことか?」
そう思って一歩踏み出すと、黒猫は「にゃー」とひと声。まるで返事のように聞こえました。
■小さなガイド役と歩く、不思議な小道

その黒猫との”散歩”は、なんとも不思議な時間でした。彼女はまるで目的地があるかのように歩き続け、時折こちらを確認するように振り返ります。
道は徐々に細くなり、住宅地の隅、ひと気のない空き地へと進みます。草むらを抜けると、そこには古びたコンテナがひっそりと佇んでいました。
そして、黒猫は迷うことなくコンテナの下へ…すっと体を滑り込ませ、その暗がりの奥からこちらを見上げてきたのです。
「ウチ、ここ」
そんな声が聞こえてきそうでした。
■猫は“帰る家”を持っている

この黒猫のように、「野良」と呼ばれている猫たちの中にも、実は“定位置”や“隠れ家”を持っている猫が少なくありません。
厳密には「地域猫」と呼ばれることもあり、人間の目には“住処がない存在”のように映っていても、実はしっかりと自分なりの生活圏を持っています。
また、以下のような特徴が見られる猫は、安心してそのエリアで暮らしている“半家猫”や“地域猫”である可能性が高いです。
- 毎回決まった時間にその場所にいる
- 毛並みが綺麗で健康的
- 近所の人からごはんをもらっている様子がある
- 首輪はしていないが、人に慣れている
■地域猫を見かけたらどう接すればいい?

このような猫たちと出会ったとき、大切なのは「距離感」です。
以下のポイントを押さえておくことで、猫にとっても人にとっても良い関係を築くことができます。
✅ 無理に触らない
猫から寄ってきた場合以外は、基本的に見守るスタンスで。触られるのを嫌がる子も多く、急な接触はストレスになります。
✅ 食べ物を与えるなら責任を持って
一度ごはんをあげると、猫はその場所に“期待”を持ちます。もしも継続的に与えることができないなら、その場の気まぐれでの給餌は控えましょう。
✅ トイレ・糞尿対策にも配慮を
地域猫が増えると、近隣とのトラブルの原因になることも。自治体によっては「地域猫活動」のルールが定められていることもあるため、事前の確認がベターです。
■コンテナの下の“おうち”と、静かな余韻

黒猫はこちらを見上げたまま、しばらく動きませんでした。人間はその隙間に入ることができないけれど、彼女にとっては立派な「我が家」。
そして私は思いました。
「この子にはこの子の暮らしがあるんだな」
勝手に“かわいそう”と決めつけるのではなく、その猫の自然な暮らしに、ほんの少し寄り添うだけでいい。
そうして私はそっとその場を後にしました。背後で黒猫が「にゃー」と一言、まるでお別れの挨拶のように鳴いた声が、今も耳に残っています。
■まとめ:野良猫の“家”は、あなたの想像以上に温かいかもしれない
今回出会った黒猫は、決して「迷い猫」ではなく、彼女なりの「暮らし」を持っていました。その生活を尊重することが、猫との正しい付き合い方の第一歩。
そして、野良猫を通じて私たちは、「共に生きる」ということの意味を再確認できるのかもしれません。
あなたも、もしどこかで黒猫に「ウチ来る?」と誘われたら――少しだけ、ついて行ってみてもいいかもしれませんよ。
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