とある晴れた午後、男性はとある小さな港町を訪れました。潮の香りと寄せては返す波の音が心地よく、観光客でにぎわうわけでもない、どこかのんびりとした雰囲気です。
旅の目的はただ一つ――心身ともにリフレッシュすること。古い街並みを歩き回り、程よい疲労感を覚えた頃、ちょうどいい場所に年季の入ったベンチを見つけました。
※この記事は感動猫動画さんの動画をもとに作成された創作物語です。
想定外の大集合!

「少し腰掛けて休もう」とベンチに座った途端、驚くべき光景が男性を待ち受けていました。
足元に一匹、二匹……気づけばあっという間に周囲が猫だらけになったのです。まるで合図があったかのように、港町の野良猫たちが男性の両脇から膝の上まで我先にと占拠。

まばらに寝そべるのではなく、まるで“ここがわたしたちの憩いの場だ”と言わんばかりの団結力です。
男性は思わず「なになに!?」と声をあげましたが、そこに敵意はなく、むしろ人懐っこさが感じられました。おそらく、いつもこのベンチに来る人から餌をもらっているのでしょう。
通りがかりの地元の人も「ああ、また猫に囲まれた人がいる」と微笑ましそうに見ています。まったく見ず知らずの男性にここまで警戒心を抱かない猫たちが不思議でなりません。
謎のモテ期到来

ただ、男性は餌を持っていません。手ぶらでの散策だったため、カバンの中にも食べ物はなし。
猫たちはじっと男性の様子を伺い、「おやつはないの?」とばかりに首をかしげています。手の匂いをかいだり、足元をすり抜けたりしながら、あきらめる様子がないのが愛らしいものです。

しかし、なにより居心地がよくて困ってしまいます。ふわふわの毛並みが男性の膝を温め、周囲から聞こえるゴロゴロという喉の音が心をくすぐるのです。
求められているのは餌だけではなく、もしかすると“ぬくもり”なのかもしれません。ベンチでちょっと一息つくはずが、すっかり猫たちに包囲され、つい長居をしてしまいました。
猫たちとの別れと感謝

どれほどの時間が経ったのか、気づけば日がやや傾きかけています。
男性は大集合の猫たちに「何もあげられなくてごめんね。でもありがとう」と心からのお礼を伝え、立ち上がりました。

すると猫たちは慣れたようにふわりと散っていき、思い思いの場所へ戻っていきます。きっと、次に座る誰かをまた温かく迎えるのでしょう。
こうして男性は、思いがけず“野良猫天国”を体験しました。何気なく腰を下ろしたベンチで、こんなにも驚きと癒やしを味わえるなんて夢にも思わなかったのです。
港町と猫たちの穏やかでやさしい空気感に包まれたこの出来事は、旅の中でいちばん心に残る思い出となりました。

ベンチを離れたあとも、ふと背後を振り返ると、そこにはまた新たな“お客さん”が座っているのが見えました。あっという間に猫たちが集まっているのがわかり、男性は小さく笑みをこぼします。
港町の小さなベンチ――そこは、疲れた旅人と猫たちが出会い、ささやかな幸せを分かち合う不思議な場所なのでした。
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